2010年08月23日

秋合宿下見稽古記

 
 精神を集中する。

 肩幅に持った鉄棒を呼吸と共に持ち上げる。

 胸の上、丁度両肩の前に持ち上げたまま、イキミと共に一度掛けた腹圧に更に10回、腹圧を掛ける。

 腹圧を掛ける度に、腹直筋を恥骨側に押し込む。


 佐々木先生に教えて頂いた「中心鍛冶術」の中の腰腹練修法(上体)。

 中心鍛冶術ではこの他に、腰腹練修法(下体)、中心力腰式鍛錬法、中心力腹式鍛錬法の4つの型がある。鉄棒を持って腹圧を掛けるだけの極めて簡単な方法であるが、決して容易く会得で来るものではない。しかしそこには深遠なる崇高な至宝が内包されている。

 春充先生は晩年、腰腹練修法(上体)と(下体)の二法のみ鍛錬しか行わなかったという。その練修時間は僅か四十秒であった。

 佐々木先生と私を含めた計5名で、春充先生の生誕の地であり、秋の合宿地でもある山梨県西桂町へ下見稽古に行って来ました。佐々木先生の自宅に私、呼庵さん、中島さん、吉田さんが集合し、佐々木先生自ら運転する車で現地に向かいました。
 翌朝の稽古からは板倉さんが合流する事になっていました。首都高速から中央自動車道、途中大月JCから河口湖方面に進路をとり、平日だったせいか渋滞に巻き込まれる事もなく約1時間30分で西桂町に到着しました。

 西桂町に着いて最初に向かったのは、春充先生の生家があった場所にお兄さんの川合山月氏が建てた記恩碑でした。春充先生は、この記恩碑の除幕式出席の為、昭和9年9月12日に帰郷し、その当時の事を著書「聖中心道肥田式強健術」の中の、一番最初の項目「アヽ故郷の山川」で書かれています。
 著書では8年振りに帰郷した故郷に思いを寄せ、40年前のまだ身体が弱かった少年時代を回顧し、強健を目指すきっかけとなった背景を詳しく書いています。

 記恩碑が建っている場所からすぐ近くに桂川が流れており、民家が立ち並ぶ脇道を通って、私達は川岸に向かいました。桂川は、今は護岸工事がいきわたり、著書の中で春充先生が回顧しているような昭和9年の頃の風景は残念ながら見る事は出来ませんでしたが、今でも富士の湧き水が桂川に注がれ、川底まで透き通っていて、かつては清流であった頃を垣間見る事ができました。
 そこから近くの公園に移動すると、桂川に架かった橋の上から倉見山を通して富士山を見る事ができました。著書の中で、春充先生が桂川から富士山を見て『オヽ富士!』と心が叫んだと書いてありましたが、時代は違っても春充先生が見た同じ富士山を、同じ場所で見る事ができ、私達はしばし富士山に見とれ、感動していました。

 その後、秋合宿の宿泊施設となる三つ峠グリーンセンターへ移動。三つ峠グリーンセンターは、山と緑に囲まれた中にあり武道館、テニスコート、フットサルなどの施設が併設されています。宿泊室になる部屋は清潔観あふれる和室で、すぐ脇を小川が流れていて、開け放された窓から入ってくるせせらぎの音はとても気持ちの良いものでした。
 少し休んでからお風呂で汗を流し、食堂では佐々木先生を囲んで早々とビールで喉を潤しました。その席で佐々木先生は肥田式の魅力についてお話されましたが、「肥田式をやっていて何が、一番かと行ったら、自分の魅力を引き出す事だ。肚が出来てくると自然に魅力が出てくる」という事を仰っていました。私も早く肚が出来ないものかと思いを巡らせましたが、私以外の人達も皆同じ事を思っていた事でしょう。部屋に戻り、寝床に横になると、川のせせらぎの音の気持ち良さに、いつしか眠りについていました。

 朝早くに目覚めた時、早朝稽古が頭をよぎりましたが、今回は合宿の下見ですから、朝錬はありませんでした。いつもの合宿の習慣からか、自然の中で大きな声を出したくなり、外にでて斜腹筋、大胸筋を吉田君と行いました。朝のすがすがしい空気の中で行う気合発生はいつもながら爽快でした。

 朝食が終わってから武道舘に移動していよいよ稽古に入りました。
 稽古の内容は中心鍛冶術です。中心鍛冶術は佐々木先生も、今までに本格的に教えていないとの事で、私達は幸運に恵まれました。鉄棒を使っての稽古になりますが、メインはやはり肚です。決して力であげるのではなく、肚を使って上げ、肚を練ることでした。
 メインの4つの型を教えて頂きましたが、かなりの運動量に匹敵し、少ない回数で物凄い負荷がかかりました。力でやるのではなく、肚でやれば絶対筋肉を傷めないと先生はおっしゃっておりましたが、恐らく明日は間違いなく筋肉痛だろうと自覚する私でした。

 稽古後は、みんなで山梨名物のほうとうを頂き、板倉さんお勧めの石割神社に向かいました。石段だけで何百段とあり、ひたすら登る石段は、ほうとうの大盛りを食べたせいか、稽古の後のせいか、みんなの足取りは重く、かなりきついものとなりました。
 やっと辿り着いた山頂では、神社の上の石割を3回廻ると願いが叶うとあり、全員狭い間を身体を通して、3回廻っていました。後で調べると、この神社はパワースポットとして知られる神社だったようです。

 石割神社を下山した私達は、温泉「石割の湯」で汗を流し、身も心も肚も充実して帰路に着きました。

 今回、合宿とは違って観光色が強いものでしたが、佐々木先生と春充先生の生誕の地を廻れた事、そして一緒に共有できた時間は大変貴重なものでした。晩年の型でもある中心鍛冶術を学ぶ幸運にも恵まれ、かけがえのないものとなりました。秋の合宿では、全国から集まってくる仲間達との再会を楽しみに、そして春充先生生誕の地で、思う存分、思いっきり肥田式の稽古ができ、早く肚が出来る事を願い日々の稽古に励んでいこうと思います。


2010年8月20日 今川利浩



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2010年08月16日

肥田式強健術真伝 041

 
 では、「気合とは何か?」と正面から問われて、明確に答えを述べられる方はほんの僅かだと思います。それほど気合を知る人は少なく、ましてや一時代前まで伝承していた気合術などを学んだ、気合を探究したなどという方はごくごく希で、著者である私ぐらいだろうと思えるのです。
 「型」中心の学びは、広き門から入る代わりにダラダラとした動きであって、集中とも、一所懸命とも縁が遠いのです。対して「気合」を学ぶというのは、針の穴をくぐり抜けるような狭き門から入ることですから、狭き門を探究して入ろうと思った時から、はじめの門探しに試行錯誤と紆余曲折が始まるのです。
 真伝の肥田式、気合鍛錬の「肥田式強健術」を志す学び人には、山登りに喩えて気合の学びを話しています。人生や学びの過程は、山あり谷ありの山登りに似ているからです。 
登山にはハイキングという軽登山、日本アルプスへの本格的な登山、急峻なヒマラヤに挑む命がけの登攀があります。「型」主体の学びはハイキングで、努力に見合ったそれなりの健康効果が味わえます。千メートル級登山は気合鍛錬途上で、健康増進と『八大要件』強健体への改造効果を確実に眺めることになります。対して潜在力発現や悟道を目的とするならば、人生を懸けて命がけにならざるをえないわけです。持てる力の一切を学びに集中し、確実に基礎を体得するまでは脇目もふらずに学び続けられなければ、少しの成果も出せないということだからです。

 途中で挫折し、それまでの努力を無駄にする方を見かけますが、そうならないためにも基本を確実に押さえるようにします。
気合鍛錬の入門は、進歩向上に欠かすことができない観察能力の向上、そしてとかく個人的感覚に陥り自惚れに繋がる思い込みや視野狭窄を除去する訓練から入ります。その感受性向上の訓練と平行して、人体の表面からでは見えない「深層部呼吸筋群から力を起こして表層筋群を使う」というように、始めから緻密な学びをします。
 その緻密さを初心者にありがちな独断的思考で判断したり実践したりするのではなく、生理・解剖・力学に照らし、客観的な解釈を師匠と対話することで、科学的な理解を重ねながら学んで行きます。
 初心の段階で自己をどれだけ否定できるかという個人的感覚を排除した科学的学びは、冷静な客観性を生み出します。その方法で体得できた効果の一切を、専門用語で明確に表現できるようになります。このような学びをすると、何処に間違いがあり、正しい学びはなどの正誤を細部まで、明確に把握できるわけです。
 このような優れた学びがあるからこそ、潜在力とか悟道という内的な、とかく独断的感覚や飛躍的物言いに陥りやすい学びが、「道にど素人」でも、結果的にはいつの間にか体得の境地に至るわけです。
 気合鍛錬を学ぶ者は、常に理性的に学んでいるかを振り返り、曖昧な物言いや感覚的学びを絶対にしないこと、それこそ創始者が明示する肥田式の真伝であるということを理解していただけるとよろしいですね。

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2010年08月11日

肥田式強健術真伝 040

 
「気合で学ぶ肥田式強健術の体系を紹介します」


 「肥田式強健術」の学び方には二つの流れがあります。

 一般に知られていて広く普及しているのは「型を繰り返す」方法です。この「型」主体の学び方は、肥田式の型の内、10の形で構成されている「簡易強健術」を主体として行われています。「肥田式を学んでいる。肥田式を学んだことがある」という方に何を学んだのか?と問うと、例外なく「簡易強健術型」をやったと答えます。
 「肥田式強健術」には「簡易強健術」の他に「呼吸操練法(7形)」、「気合応用強健術(11形)」、「椅子運動法(8形)」の型があり、それらの各型が存在する明確な目的があります。
 気合鍛錬にまで歩を進めるには、「簡易強健術」から気合習得の基盤を創る「呼吸操練法」を基盤として、中心の鍛錬では「気合応用強健術」を体得します。そうすれば呼吸力を昂進する深層部筋群が使えるようになり、健康効果が驚くほど体感できるはずです。

 そして二つめの流れは、「武道の精華たる気合で腰腹同量正中心の鍛錬を行う」体系です。この気合鍛錬の学びにあたっては、肥田式強健術を構成する全型の意味と目的を明確に知り、順序よく学んでいくようにします。
 肥田式の真伝は、体系を構成する型を気合鍛錬で練り上げます。しかし肥田式の中核たる「気合」の習得のためには、気合を鍛錬できるだけの基礎をガッチリ組まなければなりませんし、呼吸、姿勢、動作、それぞれに学ぶことが多くあります。ですから、普通の生活をしながら学ぶには容易ではないため、相当熱心に段階を踏んで学んでいかないと基礎さえ習得できません。
 そのためか、「肥田式強健術」というと型だけをクルクル繰り返す、迫力も豪快さも、美的センスも皆無の、気抜けの運動だけが広まったのではと思います。
 では何故、「肥田式強健術」本来とはほど遠い、レベルも低く効果もない方法が広まったのかと考察しますと、ダイジェスト本などで紹介されている型を真伝だと勘違いしたため、また指導している方も本格的に基礎から学ばなかったためなどがあると思います。
 それにつけても、「気合」の習得を難しくしているのは、武道の世界でも気合が見られなくなってきているように、気合に縁が遠くなってしまったことがあげられます。虚弱な方や普通の人を英雄や豪傑、神仙へと丸ごと改造する方法が、「大声」や「かけ声」、はたまた「気合だ〜」と叫ぶことで変身可能などとは誰も思わないわけです。


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2010年08月07日

肥田式強健術真伝 039

 
心身改造と潜在力を開花させる「肥田式強健術真伝」


第三章


「肥田式強健術」は英雄、豪傑、神仙へ変身する体系です



 肥田式強健術を指導している関係で、私は多くの方から「肥田式強健術とは!」と聞かれます。
 その問いには「乱世の英雄、はたまた豪傑、神仙の心身に改造する体系ですよ!」と答えています。気合鍛錬の「肥田式強健術」は、一般的な健康法として見ても精神と神経、血液循環、代謝、免疫などなどを著しく高め、全身の筋肉や骨格にも驚くべき変化を得ることができます。また、この本でも紹介している「天真療法」と組み合わせると、万病の治療にも、体質改善にも、すばらしい効果が得られます。
 さて、ここで「肥田式強健術」以外の伝統の代表的な学びを見てみると、武道は武士の学び、商人には石田梅岩の心学、そして農学では二宮金次郎の学びがあり、芸道でも職人道でも、その学びの中核といえる思想、技術などがあり、それぞれに基礎からの実技や道筋があります。
 「肥田式強健術」は心身を丸ごと改造して八大要件を体現する強健体を創造するという、英雄、豪傑、神仙に至る心身丸ごとの大改造を可能とする体系です。それだけに、他に例を見ないほど非常識かつ独特な学び方をします。しかし、心身改造の中心になる鍛錬は「武道の精華たる気合で腰腹同量正中心の鍛錬を行う」こと、その一点だけというシンプルさです。磨きに磨き、練りに練られて高められたモノゴトは、簡易であり、シンプルであるのは万芸に共通の事実だと言えます。
 この強健術の術語である『腰腹同量力』、この力を生み出すところは、生命力を創り出し、発露のポイントとなる、例えて言いうと電気を作る発電所に値するところです。この人体の局所は、東洋医学や哲学などで言うところの「臍下丹田」というエネルギーポイントです。ただし「肥田式強健術」においては、伝承のような曖昧模糊とした言い回し、感覚的物言いではなく、厳とした科学的見知から、生理・解剖・力学の事実に沿って解明しています。
 伝承で見られる「臍下丹田」は、単に「丹田」と称され、東洋医学や武道、禅などの宗教の体験方法として、体得の実践時に鍛錬されるところとされています。丹田を鍛錬して随所に活用すると新たな元気や生命力が生み出さて、昂進されると言われています。しかしながら、丹田ポイントとされる部分は小腸と大腸が詰まっている場所で、伝承の言い回しでは腸管の事なのか?下腹部の筋肉なのか?神経系なのか?横隔膜の加圧なのか?などなど、何を指して「丹田」と言うのかが明確ではありませんでした。
 肥田式強健術は「丹田」の位置を解剖図で示唆し、生理学から解説して、ことごとくまでも明確にしています。

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2010年08月01日

2010年 『秋期合宿』のご案内

 
2010年度 「秋期合宿」


 開催日 : 2010年10月2日(土)〜3日(日)
 開催地 : 山梨県南都留郡西桂町
 費 用 : 25,000円(会員)/30,000円(一般)
        30名限定
        受講料、宿泊費、3食込

 2010年の秋は、合宿としては初めての地、「肥田式強健術」創始者 肥田春充先生 生誕の地での開催です。富士山の北嶺に位置し、新緑の山々と清流のせせらぎ、鳥のさえずりが参加者の皆様をお迎えします。
 日頃の鍛錬の一区切りとして、定期の講座に参加されている方はもちろん、時間の都合がつかない方や遠方のため定期の講座に参加できない方には特にお勧めします。佐々木了雲より直接の指導を受けるチャンスです。
 そして、「ヒダシキって何・・・?」というまったく経験がない方でも大丈夫。年齢性別まったく関係ありませんので、安心して参加して下さい。

 伝承師範 佐々木了雲が熱く指導します。人生を“自らの力”で活き活きと生き抜く力を手に入れましょう!



 お申し込み、お問い合わせは事務局まで。

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聖中心道肥田式強健術     免許皆伝者 佐々木了雲


(ささきりょううん)

昭和22年8月生

「丹田研究所」主宰

聖中心道肥田式強健術・天真療法伝承師範。道統二代目継承者肥田通夫先生より唯一人全伝終了を証明する認可状と大看板を1984年に拝受。

最新刊『肥田式強健術』(BAB出版刊)と、基本習得ビデオ/DVD全7巻シリーズ(各45分)を主演にて完成。その他、丹田関連の著作多数あり。奉納・公開演武も全国的に展開している。


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